「リュウグウノツカイなどの深海魚が現れる(打ち上げられる)のは、大地震の前兆だ」
何が起きたか
結論は上のとおり。ここからは、この一件がどう生まれ、どうひろがり、どうみやぶられたのかを、出典の記録から時系列でたどる。
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深海の魚が、人前に現れるとき
リュウグウノツカイは、ふだんは深海にすみ、めったに人の目に触れない魚だ。その魚が海岸や定置網で見つかると、「大地震の前触れではないか」と心配する声が上がる。「深海魚出現は地震の前触れ」——研究グループが「伝承」と呼ぶこの言い伝えは、昔から繰り返し語られてきた。
繰り返し語られる言い伝えリュウグウノツカイが揚がった。大地震の前兆かもしれない——
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ひろがる 拡散
富山湾で相次いだ発見と、広がる不安
2019年2月1日、富山湾の定置網でリュウグウノツカイ2匹が見つかった。富山県では前年の秋以降、海岸や沖合で合わせて5匹が確認されており、ネット上では「地震の前兆では」と心配する声が広がった。報道は、深海魚の出現と地震に科学的な関連性は確認されていないと伝えたが、不安はそれだけでは消えなかった。
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みやぶられる 決着
336件の記録が出した答え
同じ2019年、東海大学と静岡県立大学の研究グループが、この言い伝えを正面から検証した。リュウグウノツカイやサケガシラなど「前兆」といわれる深海魚8魚種について、1928年から2011年までの漂着・捕獲336件を集め、出現から30日以内・半径100km以内でマグニチュード6.0以上の地震が起きたかを調べたのだ。該当したのは2007年の新潟県中越沖地震のただ1件。研究グループは「『深海魚出現は地震の前触れ』といった伝承は迷信と考えられる」と結論づけ、結果は米国地震学会の学会誌に掲載された。
深海魚の出現後30日以内・半径100km以内でM6.0以上の地震が起きた数 336件中 1件 8魚種・1928〜2011年の漂着・捕獲記録を検証(東海大学×静岡県立大学) -
それでも、珍しい魚が見つかるたびに
水族館の専門家は、リュウグウノツカイが浅い海に現れる理由として、餌のオキアミを追って海面近くまで移動してくる可能性を挙げる。統計が「迷信」と示したいまも、珍しい深海魚のニュースのたびにこの言説はよみがえる。「Aのあとに地震が起きた」例だけを数えず、「Aのあとに何も起きなかった」例まで数える——それがこの言い伝えの解き方だった。
見抜きポイント
- 「Aが起きるとBが起きる」という言い伝えは、統計的な裏づけがあるか確認する
- 珍しい自然現象には、通常の生態や気象で説明がつくことが多い
- 日時・場所を特定した地震の予知は現在の科学では不可能(気象庁)
この事例を生んだ妖怪
コジツケ蜘蛛こじつけぐも
無関係な事実をつなぐ因果のでっち上げ
弱点属性を見る →ヨミガエリよみがえり
否定済みデマの再燃
弱点属性を見る →先頭がメインの手口。妖怪はデマの「手口」の姿であり、発信者・拡散者を指しません。
実害
珍しい生き物の出現のたびに地震への不安をあおり、繰り返し拡散している。